チベット高原に水源を発するインダス川は全長約2900キロメートル、ヒマラヤ山系、インド領そしてパキスタン領内を北から南に縦断してアラビア海へと流れ、1950年代までに整備されたダムや灌漑で沿岸地域に麦、とうもろこし、稲などの栽培のための農業用水や水力発電用水、また生活用水として利用されてきた。このインダス川の水利用をめぐって、1947年に分離独立したインドとパキスタンの間で緊張関係が生まれたが、1960年のインダス川水利条約で、インダス川と5つの支流をインドにはサトレジ、ラビ、ベアズの三支流、パキスタンはインダス川とジェルム、チェナブの二支流を利用するということで合意した。
しかし、この流域の農業地域は乾燥地帯にあり、急激な人口増に伴う食物需要にこたえるための大規模な農業は灌漑に依存しており、地下水または川の水として循環される量の2倍もの水を使っているため、水不足の問題が深刻となってきた。近年のインダス川流域の降水量が激減したところへ海水面の上昇があり、海水が河口地域に侵入しているため、土壌への塩害が起こったり、河口付近の生態系の変化が見られる。川の水が河口に達する前に枯渇してしまうため、海から川へ上がってきて産卵する淡水魚の激減で、農業関係者ばかりでなく、漁業関係者への影響も大きい。
そこへ2001年1月のグジャラート地方での大地震で、井戸水に土が混ざったり、井戸水そのものが使えなくなるということも重なり、数千万人ものインド・パキスタンの人々が被害を受けている。このため、カシミール問題や印パ核実験で緊張関係が続いてきた両国はこれまでの対立関係を超えたところで水資源に関して再度協力関係を築く必要がある、と政府関係者はコメントしている。
(坂本典子)