黄河流域の土地は「黄土高原」と呼ばれ、標高1000〜2000メートルで、寧夏、山西、陜西などの七つの省、自治区にまたがる。黄土高原の土地は、数百万年にわたって、西方のタクラマカン砂漠などから偏西風によって運ばれて降り積もったものである。粘土を含まないため保水性が悪い。雨が降ると、表土が激しく流出する。中国で「水土流失」と呼ばれる土壌浸食である。黄土高原から流れ出した大量土砂は黄河に流入し、河水を黄濁させる。土砂は川底に堆積し、上昇した川底は黄河流域の住民を長年、洪水の危機にさらしてきた。
そんな過酷な黄河で過剰な引水を行ったため、新たに72年頃から、本来あるべき流れが突然消えてしまう―中国語で「断流」と表現する渇水現象が発生している。政府は、耕地にスプリンクラーを設置するよう勧めているが、一帯の農民は生活が貧しく、欲しいが買う余裕がないと嘆く。
先日、長江の水を水不足の中国北部に流す巨大計画「南水北調」が北京で開催中の人民代表大会で決定されたのだ。長江の水をポンプでくみ上げ、ダムや水路、トンネルを利用して北部へ流す。この計画によって北部は、黄河がもう一本できるのとほぼ等しい水の量を確保できるという。だが、長江の水にも限りがある。「南水北調」は、長江の水不足をもたらす可能性があり、節水型の社会を確立させることが先決だと主張するNGOもいる。実際、昨年寧夏の灌漑地区で政府が上流の水価格の引き上げを行った所、引水面積が4.5億立方メートル減り、干ばつの時でも断流は発生しなかったという専門家の調査の結果も出ている。
(猪野翠)